代官山 蔦屋書店コンシェルジュ通信Vol.75 DAIKANYAMA drawing「私の中のジャポニスム」企画:籔田千晴さんインタビュー
秋も深まってきました。街歩きも読書も心地よい季節です。
今回は2026年10月07日(水) - 10月27日(火)に2号館1階で開催されているDAIKANYA drawingについて、籔田千晴さんにお話しを聞きに行ってきました。籔田さんの担当の棚やお仕事のお話は、25号、また前回のDAIKANYAMA drawingは51号に掲載しております。ぜひご覧ください。

DAIKANYAMA drawing「私の中のジャポニスム」
――今回は「私の中のジャポニズム」をテーマにした企画なのですね。昨年の「DAIKANYAMA drawing」に続く企画ですね?
籔田:そうです。昨年も、手描きのアーティスト6人と文具の佐久間さん、合わせて7人をご紹介する企画を開催しました。そのときは、アーティストそれぞれが制作の軸となっている書籍「心の一冊」を選んで頂いて、そこからインスピレーションを得たアートを作っていただいたんです。今回はその第二弾で、テーマを「私の中のジャポニスム」にしました。
普段、私たちはあまり「日本人であること」を意識せずに生活しているじゃないですか。海外からの情報もたくさん入ってくるので、日本人としてベースにある感覚は、あまり意識されなくなっているように思います。でも、そうは言いながらも、やっぱり根っこには何かあるよね、という思いがあって。それぞれのアーティストの方にも、自分のベースとなっている「日本的な感覚」があるだろうと。
そこで、自分の中にある日本的な感覚がどこにあるのか、それとリンクする一冊の本を選んでいただき、そこからインスピレーションを得たアートを制作していただくことにしました。

――視点が面白いですね!「日本」ではなく「ジャポニスム」としたのは、どうしてですか?
籔田:1878年のパリ万博などをきっかけに日本美術が海外で注目され、海外から評価されたことで、日本人自身も「日本にはこんな魅力があったんだ」と逆輸入的に気づく事になった。という歴史がありますよね。
この展示でも、アーティストの中にある日本的なものを通して、私たち自身がその魅力を再発見できたらいいなと思ったんです。来ていただくお客様にも、「自分のルーツになっているジャポニスムって何だろう」と改めて見つけていただくきっかけになったらいいなと思っています。
――面白いけど、かなり抽象的なテーマでもありますね。
籔田:最初はちょっと分かりづらいかなと思ったんです。でもアーティストの皆さんに説明したら、すごくよく理解してくださって。それぞれ本を選び、そこから作品を制作してくださいました。
――参加されているのは日本の方だけではないんですよね。
籔田:そうなんです。海外の方では、ベリンダ・チムさんとヴェロニカ・ハリムさんが参加されています。ヴェロニカさんは日本がとてもお好きで、しばしば日本にいらっしゃって、京都にもよく行かれています。昨年も参加していただいたのですが、直接お話ししていると、日本人以上に日本人的というか、奥ゆかしさや静けさを感じるところがあって。だから、ヴェロニカさんにとっての「ジャポニズム」(*1)を聞いてみるのも面白いんじゃないかなと思いました。
ベリンダさんは、マカオを拠点に活躍されている方なのですが、ご自身が惹かれる日本的なものと、自分の中にある感覚とのつながりを見つけ、そこからアートを制作していただいています。(*2)


(*1)ヴェロニカ・ハリムさんの「ジャポニスム」/『白百』 原研哉著(中央公論新社)
(*2)ベリンダ・チムさんの「ジャポニスム」/『新装復刻版 変体英文字図案集』大沼知之(青幻舎)
――作品は購入できるんですか?
籔田:はい。作品を販売しますし、グッズも作っていただいています。すべてではありませんが、今回のテーマにリンクした、このフェアのためのものが中心です。
今年からはオンラインでも購入できるようにしました。昨年開催したときに、地方のお客様から「買いたい」というリクエストをいただいたんですが、お応えできなかったので。今年はオンラインでも作品を買っていただけます。
北斎からドビュッシーへ。本から広がっていく作品
――それぞれのアーティストが「本」を通してテーマを解釈するというのも面白いですね。
籔田:そうなんです。例えば島野真希さんは北斎の「神奈川沖浪裏」が紹介されている画集を選ばれました。(*3)選ばれた理由のひとつにご自身が学生時代に、「神奈川沖浪裏」から影響を受けたドビュッシーの曲を演奏した経験があるそうなんです。
――ドビュッシーの『海』ですね。北斎と関係があったとは!
籔田:波や光がモチーフになっている作品やグッズを作ってくださっていますが、そこに五線譜が登場したりするんです。
――絵画だけでなく、音楽までつながっていくんですね。
籔田:そうなんです。手製本で制作してくださった本の巻末にはQRコードがあって、それを読み込むとドビュッシーの『海』が流れる。という仕様になっていたりします。
また、「VAGUE(波)」と「REFLETS(きらめき)」というフランス語の名前がついた、ペン軸のセットもあります。漆の模様が波の様に見えるペン軸が入っている「VAGUE」と、水しぶきのきらめきの様な螺鈿が錫の中に埋め込まれているペン軸が入ってい「REFLETS」。それぞれに、美しい青のペーパーインクと、そのインクを溶いて楽しむための波の形をした小皿(陶芸家・東 一仁氏作)がセットになっています。
その他、波と富士山を刺繍したトートバッグなどもあり、作品だけではなくグッズにも、一つの軸に貫かれた島野さんの世界が広がっている展示となっています。

(*3)島野真希さんの「ジャポニスム」/『Hokusai's Thirty-Six Views of Mount Fuji』エリザベッタ・スカンタムブーロ著 (タトル出版)
――「ジャポニズム」という一つのテーマがあって、さらに「本」というフィルターが入る。そのレイヤーが面白いですね。
籔田:そうなんです。ジャポニスムをテーマに選ばれた本の世界と共鳴した作品が生まれているので、そのつながりを見つけていただくのも楽しいと思います。
「余白」「静けさ」「曖昧さ」もジャポニスム
――宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を選んだ方もいらっしゃいますね。そこからどんな作品になるのか、全然想像できません。(インタビューは展示開始前に実施)
籔田:雨宮三起子さんですね。雨宮さんは、書物にある「余白」や「静けさ」、「境界の曖昧さ」といったものを、ご自身の中にあるジャポニズム的な感覚と重ねて、この一冊を選ばれています。星が輝く夜空を、紙・インク・金箔・ビーズを使って制作された額装や、ドーム型のガラスに、天の川をモチーフにした文字や模様を刻んだ作品で、儚く美しい世界を表現されています。

(*4)雨宮三起子さんの「ジャポニスム」/『新編 銀河鉄道の夜』宮沢賢治著(新潮社)
――「余白」というのは、ほかのデザイナーの方からも出てくるキーワードなんですね。
籔田:そうなんです。「間」もそうですよね。海外では「何もないもの」は、文字通り何もないものとして捉えられることが多いけれど、日本には、その何もない空間自体を美しいと思う文化があるとも言われています。
例えば花も、海外ではたくさんの花を豪華に生けることが多いけれど、日本の生け花はそうではない。花の間にある空間を生けている、という異なる視点を持っています。
ヴェロニカさんが選ばれた、原研哉の『白百』(中央公論新社)も、「空」といった何も無い中にある日本の美意識を、白という色をキーワードに語られた一冊です。文具コンシェルジュの佐久間和子さんも、『陰影礼賛』を推薦されて「余白」をご自身にとってのジャポニスムとして捉えています。(*5)
(*5)佐久間和子さんの「ジャポニスム」/『陰翳礼讃』谷崎潤一郎、大川裕弘著(パイ インタ-ナショナル)
籔田:他には、DLOPさんが「人格を持たないものに人格を持たせる」というところにジャポニスムを感じていて、「妖怪」を選ばれています。正体の分からないもの、何となく怖いもの、モヤモヤしたものに「妖怪」という形を与える。そういう感覚に惹かれる、と。
この方は音楽関係のお仕事も多く、ELLEGARDENやDragon Ashのバンドのツアーグッズなども手がけられている人気の方です。今回のテーマに合わせて、初となる手書きの額装作品や、タトゥーシール、Tシャツ、トートバッグなども作ってくださっています。
(*6)DLOPさんの「ジャポニスム」/『妖怪学新考 妖怪からみる日本人の心』小松和彦著(講談社)

アーティストと直接会える「ドローイングサービス」
――ワークショップもかなりたくさんありますね。
籔田:期間中は、ほぼ毎日のようにワークショップやドローイングサービスを開催する予定です。
昨年はワークショップが中心でした。講師の先生に教わりながら、自分でもやってみるというものですね。
でも今年は、せっかくアーティストの方がいらっしゃるので、もう少し気軽に直接お話しできる機会があったらいいなと思って、「ドローイングサービス」を始めてみました。

アーティストさんのInstagramなどで来店時間をお知らせするので、その時間に来ていただければ、直接お話ししたり、サインをしていただいたりできます。
アーティストが用意したカードに好きな言葉をその場で描いてもらって、それを購入できるようなサービスをされる方もいますし、会場で販売しているグッズにサインをしてくださる方もいます。それぞれ内容は違いますが、アーティストと直接会って話せる機会も楽しんでいただけたらと思っています。
また、今年は2回目の開催となり、もし今後続けてゆくなら「ロゴがあった方がいいんじゃないか」と思って、ロゴマークを作りました。
イメージしたのは、書画の端に押されている落款です。パンフレットや、ポスターにアーティストの手書きの文字が並ぶので、その文字が引き立つ様なロゴマークになったらいいなと考えました。また、DAIKANYAMA drawingという企画名が長いので、略してDd(デイー ディー)と親しみを込めて呼んで頂けたらという思いもありました。
デザイナーの久能真理(*7)さんに実際にスタンプを作ってもらって、押してもらい、その中からいいものをご提案いただきました。パソコンでもハンコのような加工はできますけど、やっぱり「手描き」をテーマにしているので、そこは本物のスタンプを作って、実際に押したものを使いたかったんです。
(*7)昨年に引き続き、グラフィック全般をアートディレクターの久能真理さんにご担当頂きました。(ロゴ、パンフレット、ポスター、タペストリー、サイネージ)
――だから、全体に手作りのような手触りを感じるんですね。
籔田:そう感じていただけたら、とても嬉しいです。
パンフレットでも、参加する皆さんに「ジャポニスム」という文字をそれぞれ書いてもらっています。「私の中のジャポニスム」がテーマなので、同じ言葉でも文字からその方にとってのジャポニスムが伝わってくるようです。パンフレットの中のお名前もご自身に書いていただきました。

「本と紙とペンのためのトート」
籔田:さらに今回はロゴマークを入れた「本と紙とペンのためのトート」も作りました。
――「本と紙とペンのためのトート」ですか!
籔田:展覧会に行ったとき、紙ものが好きな人って、もらったものを折らずに持って帰りたいじゃないですか。
――あります、あります。
籔田:A4まででしたらそれが折らずに入る大きさにしてあります。それからペンが一本入るところもあって、裏側には文庫と新書が入るポケットを作りました。
アトリエペネロープさんとコラボレーションして、もともとあったバッグの「Patch Flat」をベースに、「ここをもう少し大きくすればA4が入りますよね」とか、「裏側には文庫と新書が入るようにしてください」とか、アレンジしてオリジナル版を作っていただきました。
――ものすごく具体的に使う場面が考えられていますね。
籔田:ゼロからバッグを作るのは大変なので(笑)。でも、ピンポイントで自分が欲しいと思う形にしていただきました。
価格は8,800円で、カラーは2種類あります。
――素敵だし、便利で細部のこだわり、使ってみたいです。

籔田:もう一つ、「ガチャで楽しむ活版カード」というグッズも作りました。
ガチャって、今は日本文化の一つとして海外の方にもすごく人気がありますよね。だから「現代のジャポニスム」として紹介するのも面白いんじゃないかなと思って。ガチャガチャを回すと、活版印刷のカードが出てきます。
竹尾(竹尾 TAKEO: a leading paper distributor)さんという紙の会社と、Albatro Designという活版印刷の設備をお持ちのデザイン事務所にご協力頂きました。
ちょっとぷっくりした活版の質感がかわいいんですよ。達磨など日本のモチーフが入っていて、一言書けるスペースも空けてあります。一枚300円です。
(*8)活版カードのデザインは、「一言書けるスペースがあった方がいいよね。」と運営メンバーの岡本さくらさん(Paper Tree)のディレクションの元、カリグラフィーアーティスト/スクリプトデザイナーの原田祥子さんがデザインしてくださいました。
――ちょっとしたカードが欲しいときにも使えそうです。
籔田:そうなんです。一言書くのにちょうどいいと思います。海外の方へのお土産にもしていただけたらと思っています。

見るだけでなく、自分でも描いてみる
籔田:今回は文具と紙ものの専門店として「Paper Tree」、オリジナル和紙製品を企画・販売する「WACCA JAPAN」、京都で創業した文具店から生まれた文具メーカー「TAG STATIONERY」にも出店協力していただきました。作品を見ていると、「自分でもやってみたい」と思うじゃないですか。そのときに使える道具や紙なども販売してくださいます。
だから、アーティストの作品を見るだけで終わるのではなくて、そこから自分でもやってみることができるんです。

――籔田さん自身もやったりするんですか?
籔田:いえ。興味はすごくあるのですが(笑)。
アーティストが文字を書いている姿って、本当に美しいんですよ。バレエをやっている方の所作が美しいのと同じで、ペンを持って紙に向かっている姿もすごく美しい。憧れます。
ペンが滑る音だけが聞こえる時間
――ワークショップも作品を作ることだけが目的ではなさそうですね。
籔田:そうなんです。私は自分では参加しなくても、担当なのでワークショップの横に座っていることがあるのですが、それだけでも瞑想した後みたいな、座禅を組んだ後みたいな爽やかな気持ちになるんです。
先生も静かな口調でお話しされて、皆さん集中していて、ペンが紙の上を滑る音だけが聞こえる瞬間がある。
日常生活で、そんな時間ってなかなかないじゃないですか。少し墨やインクの匂いがして、その中で一時間過ごしていると、気持ちがすごく穏やかになるんです。デジタルデトックスにもなると思います。
ワークショップにも難しいものから気軽に参加できるものまでいろいろあります。ペーパーツリーさんのホームページから申し込んでいただけます。文字を書くものだけでなく、絵を描いたり、ラッピングを楽しんだりするものもありますので、自分に合ったものを見つけていただけると思います。
「私の中のジャポニスム」を見つけに
――ここまでのお話を聞くだけでも、相当な準備を要する企画ですよね。
籔田:一年くらい前から準備しています。何といっても、まず本を選んでいただいて、そこから新しいアートを作っていただくので、時間がかかるんです。
本も、選んでいただいた後に品切れになったら困るじゃないですか。だから「この本にしました」と連絡をいただいたら、すぐに発注して確保して。出版社にも「こういう企画をやっていて、この本が選ばれたんですけど、なくならないですよね?」と連絡したりして(笑)。
――一年かけて準備して、ようやく日の目を見るんですね。
籔田:本当にそんな感じです。すでにある作品を集めるのではなく、ゼロから作品を作っていただく企画なので、制作期間も必要です。
――昨年の開催があったからこそ、第二弾につながったんでしょうか。
籔田:そうですね。昨年もとても反響があったので、「もう一回やってみよう」と。「あんなに大変だったのに、またやるの?」とも言われましたけど(笑)。でも、せっかくだから二回目をやってみようと思いました。こんな企画があったらいいよね。という構想の段階から、運営メンバーとして編集者の須藤敦子さんと、Paper Treeの岡本さくらさんにご協力頂いています。売り場ではアーティストごとに担当者がいて協力してもらっています。
――本を選び、そこからアートが生まれ、さらにグッズやワークショップへと広がっていく。かなり盛りだくさんですね。
籔田:本当に盛りだくさんです(笑)。でも、今回の作品は、本の内容をそのまま絵にしたものではありません。一冊の本を入り口にして、アーティストそれぞれが「自分の中のジャポニスム」を見つけ、それを再解釈して作品にしています。「どうしてこの本から、この作品になったんだろう」と、その間にあるものを想像しながら見ていただくのも面白いと思います。
そして最後には、来てくださった方自身にも、「自分の中のジャポニスムって何だろう」と考えていただけたら嬉しいです。
籔田千晴(やぶた・ちはる)
代官山 蔦屋書店デザインコンシェルジュ。オープン時より勤務。
ずっと早起きな人生にあこがれていたので、開店から早番を担当。

アーティストの皆さんと(一番右手前がご本人)
写真クレジット
籔田千晴(2枚目、ドローイングサービス)/村上尚(バッグ)/深谷瞳(プロフィール写真)/塚本江里(その他の写真)
【第387回】間室道子の本棚 『ダーク・ダーク』サマンサ・ハント 壁谷さくら訳/白水社
第116回の『アニーはどこへ行った』、217回の『その昔、N市では』、323回の『人形のアルファベット』など、なんかへんなもの読んじゃったなあ、という作品をいくつか紹介してきたけど本書はそのきわみ。
いままでこんなものは読んだことがない。独創的。こわいというより異常な話。「これって実際起きたことですか、主人公の妄想ですか」の区別がつかないし、ついたとて、なのだ。
事態の原因と結果がつながらない。日常と非日常の反転でもないし、「この人ふたりは同一人物の陰と陽なのでは」でもおさまらない。読み味のいちばん近い感覚は、「分断」だろうか。
たとえば「黄色」というお話では、四十二歳で実家に戻ってきた男がとつじょ自分の部屋の壁をペンキで黄色に塗りたくる。で、達成感と高揚を得た彼は夜のドライブに出る。そして住宅の立ち並ぶエリアでアクシデントが起き、助けを求めていちばん近い一軒を訪ねると女の人が出てきて――。ラストシーン、彼はこの家の庭にひとり立っている。
「自室をまっ黄色にしたことにより最終的に他人の家の庭にいます」は、原因/結果としておかしいし、ずーっと同じ夜のできごとなのに、ぶつっ、ぶつっ、と場面、関係性が切断され、主人公はどんどんへんな感じになっていく。読者は気づく。不穏さに巻き込まれ続けた彼は、最後に自身が不穏な存在になっていないか?他人の庭に立ち尽くす彼の手には、ある物が握られているのだ。
さらに、「総員」というお話。まず舞台は夜の海。沿岸警備隊員とタンカーの乗組員がでてくる。で、場面変わってある高校の話になる。女生徒たち十三人に異変が起きているのだ。校長先生は、空に月が十三個浮かんでいたってこれほど驚かない、と思うが彼になすすべはない。一人とか二人なら偶然で解釈できる。でもこの人数が同時にだと、なんらかの「しめしあわせ」がうかがえるけど彼女たちは口を割ろうとしない。
そしてまた夜のタンカーの場面。読みながらふと、「この人物って、もう死んでるんじゃ・・・」と思えるんだけど、生きてますか幽霊ですか、を問う話でもない。こわさはそこにはない。
どの話もラストは静かな極限状態を迎えている。どうしたら救える?良くなる?は方向として消え、登場人物も読者も、ただ虚無のなかにいる。
白に対しての黒、明るさに対しての暗さではなく、ひたすら違った種類の暗黒が層を成しているのが魅力的。まさに、ダーク・ダークな短篇集。

代官山 蔦屋書店 文学担当コンシェルジュ 間 室 道 子
【プロフィール】代官山 蔦屋書店 文学担当コンシェルジュ 間 室 道 子
ラジオ、TVなどさまざまなメディアで本をおススメする「元祖カリスマ書店員」。雑誌『Precious』に連載を持つ。書評家としても活動中で、文庫解説に『蒼ざめた馬』(アガサ・クリスティー/ハヤカワクリスティー文庫)、『母性』(湊かなえ/新潮文庫)、『蛇行する月』(桜木紫乃/双葉文庫)、『スタフ staph』(道尾秀介/文春文庫) 、『プルースト効果の実験と結果』(佐々木愛/文春文庫)などがある。
ポッドキャスト「代官山ブックトラック」
代官山 蔦屋書店の人文フロアから販促企画・広報を担当している吉見と人文コンシェルジュの宮台がお送りするポッドキャスト「代官山ブックトラック」は、毎週水曜日の夜20時に更新しています。
番組の感想、紹介してほしい本、エピソードのリクエストなど、みなさまからのメッセージをお待ちしています。https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSelNMsnC6mBXgIyn4_IeLUZbbsATRjE20592SrhiEaB4Td7WQ/viewform?usp=header
#269_今、人文知の現場はどこにある?ー『はたらく人文知』谷川嘉浩、朱喜哲編(光文社)本書を手がかりに、本というメディアの力を知を届ける人々の現在を考えます。
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11月13日(金)『リリアン』(新潮文庫)&『憂鬱な恋の忘れ方』(幻冬舎)刊行記念 岸政彦×カツセマサヒコ 二人の「まさひこ」対談vol.4! W新刊刊行記念トーク*来店満席
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11月26日(木)代官山文学ナイト:堀江敏幸先生トークショー「文学柔夜(ぶんがく・やわやわ)2026」 『二ダースのうずらをめぐって 回送電車Ⅶ』 (中央公論新社)刊行記念
11月27日(金)代官山文学ナイト:岸本佐知子さんトークショー「佐知子の部屋」vol.24 『新しい人生――小説、エッセイ、日記』(ルシア・ベルリン著 岸本佐知子訳 講談社)刊行記念
12月15日(火)『社会が壊れるその前に―メアリ・ダグラスの人類学―』(新潮社)刊行記念 磯野真穂×濱口竜介 トークイベント 「「自分らしさ」はどこにあるのか?――演技と象徴をめぐって」*来店満席
気づけば日が落ちるのもずいぶん早くなりました。季節の移ろいを感じながら、秋の夜長を楽しみたいですね。
今号も人文コンシェルジュの宮台由美子がお届けしました。
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