代官山 蔦屋書店コンシェルジュ通信Vol.24

好きなものに囲まれて働く、アートフロアの担当者に聞く
代官山 蔦屋書店人文 2024.06.17
誰でも

お天気の日が続いていましたが、明日は雨予報のようです。今回のニュースレターは、好きなものに囲まれて働いているという、アートフロアの佐々木大輔さんにお話を伺ってきました。

ほかに、ポッドキャスト最新情報、間室道子の本棚、イベント情報をお届けします。

その前に、ちょうど今日から2号館の1階 建築・デザインフロアでちょうど雨の日を楽しめそうな、素敵な展示、フェアが始まっていました。お近くにいらした方は、ぜひ立ち寄ってみてください。

【フェア】雨の日は、TSUTSUと過ごす。-TSUTSU The Umbrella-

「TSUTSU The Umbrellaの性能・特徴を実際に触って体感いただける展開とともに、 蔦屋書店コンシェルジュが選んだ美しい一節が、場所も時代も飛び越えて美しい雨を降らせます。」

アートフロア(ファッション・日本美術担当)佐々木さんに聞く

宮台:佐々木さん、それではまずは、せっかくなので売場から教えてください。

佐々木:ファッションの棚の担当で、今これがめちゃめちゃ売れています。

『Lightning Archives ライトニングアーカイブ』

『Lightning Archives ライトニングアーカイブ』

佐々木:ファッション雑誌に『Lightning(ライトニング)』という雑誌があるのですが、そのムック本『Lightning Archives ライトニングアーカイブ』シリーズです。ヴィンテージ古着をテーマごとに1冊にまとめたものですごい人気です。海外からいらっしゃるお客様がよく買ってくださっています。

今、世界中でヴィンテージファッション、古着が流行っているので、資料としても有効なようです。もともと『『Lightning(ライトニング)』は男らしいアメリカンカジュアルの知識が集積されていて当時出ていたものが、今またちょうど人気になっている、という需要とマッチしたんでしょうね。

価格もそれなりにしますが、当時と同等のプリントレベルをすると、これぐらいの価格にはなってしまうようです。

宮台:なるほど、素人目には、過去に流行ったんだろうな、くらいにしか見えないのですが、これが最先端なんですね!そしてこちらは、おしゃれな本が並んでいますが?  

佐々木:ハイファッション、ハイブランドというか、コレクションブランド、のコーナーです。国ごとに並べてあって、左からパリ、ロンドン、アントワープ、ミラノ、アメリカといった国ごとになっています。ここにいらっしゃるのは、海外のお客様が多いので、やはりコム・デ・ギャルソンやYohji Yamamoto(ヨウジヤマモト)、イッセイミヤケ/ISSEY MIYAKEなど世界に誇る名だたるブランドが人気のようです。お店の内装用に買っていく方もいますが、海外の方が圧倒的に多いです。

それから日本美術も担当しています。こちらはコロナ禍は縮小していましたが、あけてからは大々的に展開するようになりました。ここは日本美術の名だたる巨匠たちですね。

宮台:ここは海外の方に人気そうですね!

佐々木:そうですね、ここもコロナが明けてから、大々的に展開するようになりました。

こうしたお土産によさそうなものも、置いています。よく売れていますよ。

歌川国芳 金魚づくし 

歌川国芳 金魚づくし 

佐々木:そしてその右横が、現代アートのコーナーです。

宮台:現代アート、いろいろありそうですが、佐々木さんのおすすめは?

佐々木:こちらです。今井麗さんですね。今井麗の作品集『THE SCENE by Ulala Imai』がこちらです。テディベアや、おもちゃ、フルーツとかがモチーフになりながら、ファンシーでかわいいようで、どこか不思議な作風で注目されています。2012年シェル美術賞本江邦夫審査員奨励賞受賞など、数々の賞も受賞されていて、若い人にも人気です。

THE SCENE by Ulala Imai

THE SCENE by Ulala Imai

宮台:佐々木さんって前は別のフロアにいましたよね。

佐々木:前は旅行フロアにいました。旅行一切しないんですけどね。たまたま面接した時に旅行フロアだったので。旅行書はメンテが命ですから、そこを頑張っていました。

宮台:それでいったん代官山 蔦屋書店から離れて、また戻ってきましたよね?

佐々木:戻ってきたときは、また旅行書だったのですが、ちょうどアートフロアの担当がやめるタイミングだったので、アートとファッション担当になりました。

宮台:佐々木さんおしゃれだもんね。

佐々木:ファッション、好きですね。服飾系の専門学校でひととおり学んだんですけど、ちょっとそこまでじゃなかったです。それで丸善の文具フロアとか、ブックファーストとかで働いたりもしました。文化的なものが好きなんです。文化を総合的に包括している場所が好きで、好きなものがあるところで働くのがたのしいですね。

宮台:ファッション雑誌とかは読むんですか?

佐々木:日本の雑誌は読まないかもしれないですね。海外のファッション誌の方が多いかな。

あとはインスタでも海外のコレクションの最新情報とか見れたりしますね。

海外のファッションは、器用しているフォトグラファーだったり、ストーリーが独創的なので、そこが好きです。たとえば、ヒットした映画の俳優さんを、気鋭のフォトグラファーがカバーとっていたりするので、海外のファッション雑誌が毎月入荷してきて、目にできるのが超しあわせです。

宮台:たとえばどれですか?ちょっと教えてもらってもいいでしょうか?

佐々木:海外のファッション誌ってカバー違いがたくさんあるんです。これは、4冊全部同じ内容で別のカバーです。一番上のこのカバーは、映画『チャレンジャーズ』って知ってますか?「君の名前で僕を呼んで」「ボーンズ アンド オール」のルカ・グァダニーノ監督がゼンデイヤを主演に迎え、ジョシュ・オコナー、マイク・フェイストが出ているんですが、その俳優であるマイク・フェイスとが、最先端のファッションを着た表紙になっているんです。

ファッションって、世相や文化の最先端が全部結びついているんですよね。この一番左のカバーも、気鋭のフォトグラファーの作品なんです。

佐々木:こういうものが入荷して、「熱いよね~」とかアートフロアで情報を共有しあって話することができるんです。好きなものに囲まれて、それを一緒に語れる人たちがいて、しかも買うことができる、最高の環境です。

宮台:それ、いただきました。佐々木さん、ありがとうございました!

【プロフィール】佐々木 大輔(ささき・だいすけ)

アートフロア2年目。ファッション、日本美術担当。映画館と美術館によく行きます。

佐々木家のわんちゃんだそうです(カワイイ!)

佐々木家のわんちゃんだそうです(カワイイ!)

【代官山ブックトラック】ポッドキャスト更新#171-想像(イメージ)が具現化する魔法の本 著者:山田鐘人、作画:アベツカサ『葬送のフリーレン』(小学館)

今回から新しいマイクを導入したというわけで、聞きやすい!と好評いただいております。ぜひ試しに聞いてみてください。

【第275回】間室道子の本棚 『女彫刻家』ミネット・ウォルターズ 成川裕子訳/創元推理文庫

「塀の中の怪物」に会いにいくミステリーって好きだ。トマス・ハリスの『羊たちの沈黙』、櫛木理宇さんの『死刑にいたる病』、柚木麻子さんの『BUTTER』などが有名で、テレビドラマ『相棒』にもある。

「二十四人殺しました」とか「犯人の異常な嗜好」とかとうらはらに、登場する「怪物」たちは、インテリジェンスに満ちていたりやさしげなお兄さんめいていたりフツーの中年女性に見えたり女王様然としていたりする。叫び続けてよだれをたらして目の玉ひんむいて、というのは名作には出てこない。

面会に行く人の立場や理由もさまざまで、捜査側が被告になんらかの取引を持ち掛けに行く場合もあれば、受刑者から一般市民に「あなたに会いたい」と手紙が来るケースもある。いずれにしろ主人公たちは刑務所や拘置所に出向く。「あの人に、ほかでもないこの私が」。プライドと好奇心が怖れをねじ伏せる。怪物は、魅力的なのだ。

前置きが長くなったが、本書はこのテーマの大傑作でめでたく復刊された。舞台は八十年代後半の英国。「中」にいるのはオリーヴ・マーティン。どえらい事件を起こし、すべてを自分がやったと認めて服役中。身長百八十センチ、体重百六十五キロ越えの巨体。ブロンドの髪は汚れてべったり頭にはりつき、脇の下には黒い汗じみ。

「外」からやってくるのは三十六歳のフリーライター、ロザリンド(ロズ)・リー。あるできごとから世捨て人みたいになっていたのだが、エージェントに「これを書かないと編集者から契約を打ち切られるわよ」とオドされ事件ルポの執筆を引き受ける。そしてなにより、あまたの取材を断り続けていたオリーヴが、なぜかロズの申請書にOKを出した――。

  現在彼女は二十八歳。五年前の自分の誕生日に自宅でお母さんと妹を殺し、死体をがんがん切断。疲れ果てて途中でやめちゃった。で、このままではいけないと思いそれらを元に戻そうとしたの。でもパニックを起こしていたから母の頭を妹の胴体にくっつけちゃったかも。

  こんな女にインタビューせねばならない緊張と「書かねば」のプレッシャーから面会室でおかしくなってしまうロズに、オリーヴが一言放つ。その声は、深く、教養あるものだった。

自白があったもんだから、なんだかみんなそれで安心しちゃって動機の追及がおろそかに。確実なのは「どこで」=「犯行現場は家」だけ。「なぜ」がわからないということは、「あの日なにが」もハッキリしてないんだし、「いつ」も揺らぐ。そして、「誰が」も・・・?

オリーヴという圧巻の存在がロズと私たちをぐいぐいひっぱり、エピローグまでつれて行く。これをどう取るかは読み手しだい。そもそもミステリーの読み味って、「無実だったんだね、拍手しましょう」「悪じゃん。つるしあげろ!」の二択で決めていくもんじゃない。 本を閉じたあともオリーヴは私を引き付け続ける。彼女から今、「会いたい」と言われたら、皆さんあらがえます?私は・・・!

  間室道子 <b>代官山 蔦屋書店 文学担当コンシェルジュ</b>

  間室道子 代官山 蔦屋書店 文学担当コンシェルジュ

【プロフィール】間室 道子(まむろ・みちこ)

ラジオ、TVなどさまざまなメディアで本をおススメする「元祖カリスマ書店員」。雑誌『Precious』、『Fino』に連載を持つ。書評家としても活動中で、文庫解説に『蒼ざめた馬』(アガサ・クリスティー/ハヤカワクリスティー文庫)、『母性』(湊かなえ/新潮文庫)、『蛇行する月』(桜木紫乃/双葉文庫)、『スタフ staph』(道尾秀介/文春文庫)などがある。

6月~7月イベント情報

6月19日【イベント&オンライン配信(Zoom)】シリーズケアをひらく『安全に狂う方法』(医学書院)刊行記念 赤坂真理×松本俊彦トークイベント「小さく死んで生き延びるために」

【満員御礼】6月23日(日)【イベント&オンライン配信(Zoom)】『センスの哲学』(文藝春秋)刊行記念 千葉雅也×濱口竜介トークイベント「観賞と制作の深みへ」

6月25日(火)【イベント&オンライン配信(Zoom)】シリーズケアをひらく『あらゆることは今起こる』(医学書院)刊行記念 柴崎友香×斎藤環トークイベント「人間は二か所に同時にいることはできない」

6月26日(水)【イベント&オンライン配信(Zoom)】『構造の奥』(講談社)刊行記念 中沢新一さんトークショー「未知のレヴィ=ストロース」

6月28日(金)【イベント&オンライン配信(Zoom)】代官山文学ナイト:岸本佐知子さんトークショー「佐知子の部屋」vol.20 『わからない』(岸本佐知子 白水社)刊行記念

7月2日(火【イベント&オンライン配信(Zoom)】『利他・ケア・傷の倫理学』(晶文社)刊行記念 近内悠太×渡邉康太郎対談「つくることと語ること、そしてケア」

7月09日(火)【イベント&オンライン配信(ZOOM)】「本を出すということ」~永松茂久『心に響く言葉』発売記念トーク&サイン会~

7月16日(火)【イベント&オンライン配信(Zoom)】『仕事も人生もスーッと整う 幸せになる練習。』(すばる舎)刊行記念トークイベント&サイン本お渡し会 前野マドカ×前野隆司〜はたらく私の〈ウェルビーイング〉を高める行動のヒント〜

7月17日(水)【イベント&オンライン配信(Zoom)】Podcast「夜ふかしの読み明かし」第三弾 トークイベント出演:大島育宙、永井玲衣、西川あやの

7月19日(金)【イベント&オンライン配信(Zoom)】第26回代官山人文カフェ「会話を続けることはなぜ大事なのか?」 朱喜哲『人類の会話のための哲学』(よはく社)刊行記念 話題提供者:朱喜哲×三浦隆宏 進行役:奥田太郎

「代官山 蔦屋書店コンシェルジュ通信」今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。今回も人文コンシェルジュ宮台由美子が担当しました。ニュースレターの感想など、よろしければコメント欄にお願いします。

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